2026年10月7日水曜日

第68話 子育て 秋の夕方『手のひらの風』


 水曜日の帰り道。昨日より少し冷たい風が吹いて、子どもが両手を広げた。

「お母さん、風つかまえる!」

走り出すのかと思ったら、その場でじっとしている。

「つかまった?」

「うーん……逃げちゃう」

 私も真似をして手のひらを広げた。風は指の間をすり抜け、髪を揺らして通り過ぎていく。

「ほんとだ。つかまらないね」

「でも、いるのはわかるよ」

その言葉に、私は少し驚いた。

 昨日は落ち葉の音を聞いた。今日は、見えない風を感じている。

目に見えなくても、手に残らなくても、確かにそこにあるものはたくさんある。誰かの優しさや、一緒に過ごした時間も、きっと同じなのかもしれない。

「お母さん、もう一回来た!」

子どもが笑う。

 今度は私も両手をいっぱいに広げた。

十月の風が、二人の間を駆け抜けていった。

 何も持っていない手のひらなのに、なぜか少し満たされている。

今日の幸せは、つかまえることはできなくても、二人で確かに感じた秋の風だった。

今日のこころの花🌼

 外に出たら一度手を広げ、風を感じてみましょう。見えない心地よさにも気づく時間を。


#子育て
#秋の風
#小さな幸せ 

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第68話 子育て 秋の夕方『手のひらの風』

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