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2026年10月16日金曜日

第77話 子育て 金曜日『二人分のありがとう』


 金曜日の夜。夕食の片づけをしていると、子どもが小さな布巾を持ってやってきた。

「お母さん、ぼくもやる!」

昨日、買い物袋を半分こしたことが、まだ嬉しいらしい。

「じゃあ、テーブルをお願いしようかな」

子どもは張り切って拭き始めた。右へ左へ、何度も布巾を動かす。

「できた!」

見ると、テーブルの端に少しだけ水滴が残っていた。

 いつもの私なら、何も言わずに拭き直していたかもしれない。

でも今日は、そのままにしておいた。

「ありがとう。助かったよ」

すると子どもは、にっこり笑った。

「お母さんも、いつもありがとう」

思いがけない言葉に、手が止まった。

 毎日していることは、いつの間にか当たり前になっていく。ご飯を作ることも、洗濯することも、家を整えることも。

けれど、当たり前の中にも、誰かを思う気持ちがある。

片づけが終わると、二人で温かいお茶を飲んだ。

 テーブルの端には、まだ小さな水滴が一つ残っている。

今日の幸せは、完璧に片づいた食卓ではなく、そこに交わされた二人分の「ありがとう」だった。

今日のこころの花🌼

 今日は身近な人に「ありがとう」を一つ伝えましょう。当たり前の毎日にある優しさを、言葉にしてみてください。


#子育て
#ありがとうの気持ち
#小さな幸せ 

2026年10月15日木曜日

第76話 子育て 秋の暮らし『半分この荷物』


 木曜日の夕方。スーパーで買い物を終えると、子どもが当たり前のように手を差し出した。

「今日も、ぼくが持つよ」

昨日、買い物袋を運んでくれたことが、よほど嬉しかったらしい。

「ありがとう。でも、今日は少し重いよ」

そう言うと、子どもは考え込んでから、小さな袋を指さした。

「じゃあ、半分こ!」

帰り道、二人で並んで歩いた。私の袋には野菜や牛乳。子どもの袋にはパンとお菓子が入っている。

 途中、子どもが立ち止まった。

「お母さん、疲れてない?」

「大丈夫だよ。二人で持つと楽だね」

すると、子どもは嬉しそうに笑った。

「一人より、二人がいいね」

その言葉が、心に残った。

 私はいつも、母親なのだから自分が頑張らなくては、と思っていた。けれど、全部を一人で抱えなくてもいいのかもしれない。

誰かに少し頼ることは、弱いことではない。一緒にできることが増えるのも、家族の成長なのだ。

 家に着くと、二人で袋を台所に並べた。

今日の幸せは、荷物の重さだけでなく、暮らしの小さな役割も半分こできたことだった。

今日のこころの花🌼

 今日は一人で抱えていることを一つ、誰かと分け合ってみましょう。頼ることも、心を大切にする一歩です。


#子育て
#家族の協力
#心の余白 

2026年10月14日水曜日

第75話 子育て 秋の夕方『小さな応援団』


 水曜日の夕方。買い物袋を提げて帰る道で、子どもが私の顔をのぞき込んだ。

「お母さん、足、もう痛くない?」

昨日まで少し重かった足は、すっかり元どおりになっていた。

「うん、もう大丈夫。心配してくれたの?」

「だって、昨日ゆっくり歩いてたから」

そう言って、子どもは私の買い物袋に手を伸ばした。

「ぼく、持ってあげる!」

軽いほうの袋を渡すと、得意そうに歩き始めた。

 でも、しばらくすると袋を持ち替え、少しだけ歩く速さが落ちた。

「重かったら、代わるよ」

「大丈夫。お母さんも、いつも持ってるでしょ」

その言葉に、胸が温かくなった。

 いつも私が守っているつもりだった。でも、この子も私のことを見て、心配して、力になろうとしてくれている。

家に着くと、子どもは袋を置いて大きく伸びをした。

「ぼく、お手伝いできた!」

「うん、すごく助かったよ」

 秋の夕暮れが、窓の向こうでやさしく光っていた。

今日の幸せは、私の隣にいつの間にか育っていた、小さくて頼もしい応援団だった。

今日のこころの花🌼

 今日は誰かの小さな気遣いに目を向けてみましょう。気づいた優しさには、笑顔でありがとうを伝えて。


#子育て
#子どもの成長
#小さな幸せ 

2026年10月13日火曜日

第74話 子育て 秋の朝『昨日の筋肉痛』


 火曜日の朝。ベッドから起き上がろうとした瞬間、足が少し重かった。

「あれ、筋肉痛かな」

昨日の公園で、子どもと走ったことを思い出す。

 朝食の準備をしていると、子どもが不思議そうに聞いた。

「お母さん、どうしてゆっくり歩いてるの?」

「昨日、頑張って走ったからかな」

すると子どもは、得意そうに笑った。

「ぼくは全然痛くないよ!」

「若いっていいねえ」

思わず口にすると、子どもは首をかしげた。

「でも、お母さんも楽しかったでしょ?」

 そうだった。

昨日はすぐに息が切れて、追いかけっこでは一度も勝てなかった。それでも、青い空の下で一緒に笑った時間は、とても楽しかった。

できなかったことより、楽しめたことを覚えていたい。

 家を出ると、秋の風が頬をなでた。

「今日はゆっくり歩こうね」

私が言うと、子どもは歩幅を合わせてくれた。

 昨日は私が追いかけて、今日は子どもが待ってくれる。

今日の幸せは、少し痛む足と、その隣をゆっくり歩いてくれる小さな優しさだった。

今日のこころの花🌼

 今日は結果よりも、楽しめたことを一つ思い出しましょう。小さな挑戦をした自分を認めてあげてください。


#子育て
#親子時間
#小さな幸せ 

2026年10月12日月曜日

第73話 子育て 秋の祝日『空いた場所に』


 月曜日の朝。今日はスポーツの日で、いつもより少し遅い朝食になった。

昨日、小さくなった服を片づけたおかげで、子どもの引き出しには少し余裕ができている。

「お母さん、ここ空いてるね」

子どもが引き出しを開けて言った。

「そうだね。新しい服が入るかな」

「でも、まだ入れなくていいよ」

そう言って、子どもは引き出しをそっと閉めた。

 午前中、二人で近くの公園へ出かけた。秋の空は高く、風が気持ちいい。

子どもは広場を走り回り、私はベンチに座って眺めていた。

「お母さんも走ろう!」

誘われて立ち上がる。久しぶりに走ったら、すぐに息が切れてしまった。

「遅いねえ」

「お母さんは、これが精いっぱい」

二人で笑った。

 昨日までの服を手放して、今日は少しだけ体を動かした。

新しい何かを始めるのに、特別な準備はいらないのかもしれない。

 帰宅して引き出しを開けると、空いた場所はそのままだった。

今日の幸せは、何も入れずに残しておいた場所のように、これからの楽しみを迎えられそうな気持ちだった。

今日のこころの花🌼

今日は無理のない範囲で体を動かしてみましょう。上手にできなくても、楽しめた自分に花まるを。


#子育て
#スポーツの日
#小さな幸せ 

2026年10月11日日曜日

第72話 子育て 秋の休日『小さくなった服』


 日曜日の朝。昨日の衣替えで出てきた、小さくなったパーカーが椅子に残っていた。

「これ、どうするの?」

子どもに聞かれて、私は少し迷った。

 もう着られない。でも、去年これを着て公園へ行ったことも、袖を汚して帰ってきたことも覚えている。

「捨てるの、かわいそう?」

私が言うと、子どもは首を振った。

「次の子が着たらいいじゃん」

その答えは、驚くほどあっさりしていた。

 私は、思い出まで手放してしまうような気がしていたのかもしれない。

二人で服をたたみ、譲るものを紙袋に入れた。

「いっぱい遊んでくれて、ありがとうだね」

子どもがパーカーをぽんぽんと撫でる。

 大切にすることは、ずっと持っていることだけではない。ありがとうと言って、次へ渡すこともできる。

少し空いた引き出しを見て、昨日とは違う気持ちで笑った。

 空いた場所には、これからの時間が入ってくる。

今日の幸せは、ひとつ手放したことで見つけた、新しい思い出を迎えるための小さな余白だった。

今日のこころの花🌼

 使わなくなったものを一つ見つけ、「ありがとう」と心で伝えて、これからのための余白を作りましょう。


#子育て
#衣替え
#心の余白 

2026年10月10日土曜日

第71話 子育て 秋の休日『小さな模様替え』


 土曜日の朝。窓を開けると、ひんやりした風が入ってきた。

「もう半袖、寒いね」

 子どもの言葉に、今日は衣替えをしようと思い立った。

押し入れから秋物を出し、夏服をたたんでいく。ところが子どもは、去年着ていた小さなパーカーを持ったまま動かない。

「これ、もう小さいかな」

袖を通すと、手首がすっかり出ている。

「去年は大きかったのにね」

私が言うと、子どもは得意そうに背筋を伸ばした。

「ぼくが大きくなったんだよ」

 そうだった。

服が小さくなったのではなく、この一年で、この子が大きくなったのだ。

毎日一緒にいると、成長はなかなか見えない。でも、短くなった袖が、ちゃんと教えてくれる。

 午後、秋物の服が並んだ引き出しを二人で眺めた。

部屋は昨日とほとんど変わらない。それなのに、少しだけ新しい季節の家になった気がした。

今日の幸せは、衣替えの途中で見つけた、目には見えにくい一年分の成長だった。

今日のこころの花🌼

 身近な小さな変化を一つ探してみましょう。昨日との違いに、成長や季節の歩みが隠れています。


#子育て
#衣替え
#子どもの成長 

2026年10月9日金曜日

第70話 子育て 金曜日『今週の花まる』


 金曜日の夜。夕食を終えると、私は思わず「今週も疲れたなあ」とつぶやいた。

子どもがこちらを見て言う。

「でも、明日はお休みだよ」

「そうだね。なんとか一週間終わったね」

すると子どもは、少し不満そうな顔をした。

「なんとか、じゃないよ」

「え?」

「ちゃんと終わったんだよ」

思わず笑ってしまった。

 今週を振り返れば、朝は急いだし、忘れ物もした。夕食が簡単な日もあったし、もっと優しく言えばよかったと思うこともある。

それでも、毎朝「いってらっしゃい」と送り出し、夜には「おかえり」と迎えた。落ち葉の音を聞き、秋の風を感じ、湯気の向こうで一緒に笑った。

完璧ではなかった。でも、ちゃんと暮らした一週間だった。

 「じゃあ、今週は花まる?」

そう聞くと、子どもは両手で大きな丸をつくった。

「でっかい花まる!」

 金曜日くらい、自分のできなかったことを数えるのはやめよう。

今日の幸せは、一週間を頑張った自分にもらった、大きな花まるだった。

今日のこころの花🌼

 今週できたことを一つ思い出して、自分に花まるを。頑張った一週間をやさしく終えましょう。


#子育て
#自分を褒める
#小さな幸せ 

2026年10月8日木曜日

第69話 子育て 秋の夜『湯気の向こう』


 木曜日の夜。夕食を終えたあと、子どもが窓を少し開けた。

「今日は風、冷たいね」

昨日は帰り道で、その風をつかまえようと両手を広げたのに、夜になるとずいぶん冷たく感じる。

「温かいもの、飲もうか」

 私は二つのカップを用意した。子どもには温めた牛乳、私はほうじ茶。

テーブルに並べると、白い湯気がゆらゆらと上がった。

 子どもが向こう側から私を見る。

「お母さんの顔、雲の中にいるみたい」

「そっちもだよ」

二人でカップに息を吹きかけると、湯気が揺れて、顔が見えたり隠れたりする。

 何を話すでもなく、しばらく温かいカップを両手で包んでいた。

一日の終わりには、反省することがいくつも浮かんでくる。でも、今日できなかったことは、明日に置いておけばいい。

 今はただ、ここにある温かさを感じよう。

冷たい風が吹くからこそ、わかるぬくもりもある。

今日の幸せは、湯気の向こうで笑っていた、いつもの顔だった。

今日のこころの花🌼

 一日の終わりに温かい飲み物を一杯。できなかったことより、今あるぬくもりを感じてみましょう。


#子育て
#秋の夜
#心を休める 

2026年10月7日水曜日

第68話 子育て 秋の夕方『手のひらの風』


 水曜日の帰り道。昨日より少し冷たい風が吹いて、子どもが両手を広げた。

「お母さん、風つかまえる!」

走り出すのかと思ったら、その場でじっとしている。

「つかまった?」

「うーん……逃げちゃう」

 私も真似をして手のひらを広げた。風は指の間をすり抜け、髪を揺らして通り過ぎていく。

「ほんとだ。つかまらないね」

「でも、いるのはわかるよ」

その言葉に、私は少し驚いた。

 昨日は落ち葉の音を聞いた。今日は、見えない風を感じている。

目に見えなくても、手に残らなくても、確かにそこにあるものはたくさんある。誰かの優しさや、一緒に過ごした時間も、きっと同じなのかもしれない。

「お母さん、もう一回来た!」

子どもが笑う。

 今度は私も両手をいっぱいに広げた。

十月の風が、二人の間を駆け抜けていった。

 何も持っていない手のひらなのに、なぜか少し満たされている。

今日の幸せは、つかまえることはできなくても、二人で確かに感じた秋の風だった。

今日のこころの花🌼

 外に出たら一度手を広げ、風を感じてみましょう。見えない心地よさにも気づく時間を。


#子育て
#秋の風
#小さな幸せ 

2026年10月6日火曜日

第67話 子育て 秋の朝『急がない歩幅』


 火曜日の朝。家を出る時間が、いつもより少し遅くなった。

「急ごう」

そう言って歩き出したのに、子どもの足取りが妙にゆっくりしている。

「どうしたの?」

「葉っぱ、踏んでるの」

 見ると、道の端に乾いた落ち葉が何枚か落ちていた。子どもは一枚ずつ狙って、ぱりっ、かさっ、と音を鳴らしている。

時 計が気になった。でも昨日、冷蔵庫の横に貼った絵と、「お母さんといたよ」という言葉を思い出した。

私は歩幅を少し小さくした。

ぱりっ。

今度は私の靴の下で音がした。

「あ、お母さんもやった!」

 二人で次の落ち葉を探しながら歩く。ほんの数十秒の寄り道だった。

「秋って音もするんだね」

子どもの言葉に、私はうなずいた。

 季節は見るもの、香るものだけではなかったらしい。

忙しい朝だからこそ、少しだけ歩幅を合わせる。それだけで、いつもの道に知らなかった楽しさが見つかる。

今日の幸せは、急ぐ足を少しゆるめたから聞こえた、秋の小さな音だった。

今日のこころの花🌼

 今日は少しだけ歩く速さをゆるめて、足元の音や風の音に耳を澄ませてみましょう。


#子育て
#秋の朝
#季節を感じる 

2026年10月5日月曜日

第66話 子育て 月曜日『昨日の絵』


 月曜日の朝。慌ただしく朝食を片づけていると、昨日、子どもが描いた絵が目に入った。

家と大きな空。その下に並んだ、私と子ども。

「これ、飾っていい?」

そう聞くと、子どもは少し照れながらうなずいた。

 冷蔵庫の横にそっと貼る。たったそれだけなのに、いつもの台所が少し明るくなった気がした。

「昨日、何もしなかったのにね」

私が笑うと、子どもは首をかしげた。

「何もしなくないよ。お母さんといたよ」

手が止まった。

 私はつい、出かけた、作った、片づけた――そんな目に見えることを「したこと」と数えてしまう。

でも、一緒にいることも、笑うことも、のんびりすることも、ちゃんと一日の中に残っていく。

 家を出る前、もう一度その絵を見た。

昨日の何もしない午後が、今日は小さな応援になっている。

「行ってきます」

 忙しい月曜日は変わらない。それでも、心は少しだけ軽かった。

今日の幸せは、昨日のゆっくりした時間が、月曜日までついてきてくれたことだった。

今日のこころの花🌼

 昨日の小さな幸せを一つ思い出してみましょう。その余韻を、今日を歩く力に変えてみてください。


#子育て
#月曜日
#小さな幸せ 

2026年10月4日日曜日

第65話 子育て 秋の休日『何もしない午後』


 日曜日の午後。「どこか行く?」と聞くと、子どもは少し考えてから首を振った。

「今日は、おうちがいい」

せっかくの休日なのに、と一瞬思った。買い物、公園、季節のイベント。休みの日くらい何かしてあげたいという気持ちが、いつものように顔を出す。

けれど、今日は何も決めないことにした。

 私は温かいお茶をいれ、子どもは床に寝転んで絵を描き始めた。窓を少し開けると、金木犀の甘い香りと涼しい風が入ってくる。

時計の音。紙をこする鉛筆の音。ときどき聞こえる鳥の声。

「お母さん」

「なあに?」

「今日、静かでいいね」

その一言に、肩の力が抜けた。

 何かをした日だけが、いい休日なのではない。どこにも行かなくても、特別なことをしなくても、一緒に穏やかに過ごした時間はちゃんと残る。

 夕方、子どもが描いた絵を見せてくれた。そこには家と、大きな空と、二人並んだ私たちがいた。

今日の幸せは、予定のない午後に流れていた、何もしなくていい時間だった。

今日のこころの花🌼

 今日は予定をひとつ減らして、何もしない時間をつくってみましょう。心の余白も大切な休日です。


#子育て
#何もしない休日
#心の余白 

2026年10月3日土曜日

第64話 子育て 秋の休日『月の忘れもの』


 土曜日の朝。カーテンを開けた子どもが、窓の外を見て声を上げた。

「お母さん、月がまだいる!」

 昨夜、帰り道からついてきた月が、薄い青空に白く浮かんでいた。

「帰るの忘れちゃったのかな」

そう言うと、子どもは少し考えて、

「きっと忘れものしたんだよ」

と笑った。

「何を?」

「夜!」

思わず二人で笑ってしまった。

 昨日まで夜のものだと思っていた月が、朝の空にもいる。知っていたはずなのに、こうして眺めると少し不思議だった。

 朝食を終えて外へ出ると、月はさっきより淡くなっていた。金木犀の香りが風に混じり、道には黄色い葉が落ちている。

「もう帰っちゃうね」

子どもが空を見上げる。

「また夜になったら会えるよ」

見えなくなることは、なくなることとは違う。

朝顔の種も、どんぐりの思い出も、昨日の月も。目の前にない時間にも、ちゃんとどこかで続いている。

 十月最初の土曜日。

今日の幸せは、朝の空に残っていた、月のかわいい忘れものだった。

今日のこころの花🌼

 いつも知っているものを、少し違う時間や角度から眺めてみましょう。新しい発見が待っているかもしれません。


#子育て
#秋の空
#小さな発見 

2026年10月2日金曜日

第63話 子育て 秋の夜『月を連れて帰る』


 金曜日の帰り道。すっかり暗くなった空を見上げて、子どもが言った。

「お母さん、月がついてくる」

歩けば月も動き、角を曲がっても、家の屋根の向こうからまた顔を出す。

「ほんとだ。ずっと一緒だね」

 昨日は金木犀の香りに秋を見つけた。今日は夜空に、十月の宝物を見つけたらしい。

子どもは何度も振り返りながら歩く。

「家まで来るかな」

「来てくれるんじゃない?」

 玄関に着くと、子どもは急いで窓のところへ向かった。

「あった!」

建物の間から、さっきと同じ月が見えている。

「ちゃんと来たね」

得意そうに言う顔を見て、私は笑った。

 大人になってから、月は見上げるものになっていた。でも子どもにとっては、一緒に歩いて家まで来てくれるものなのだ。

同じ景色でも、見方が変われば物語になる。

 忙しい一週間の終わり。温かい飲み物を用意して、二人でもう一度窓の外を見た。

今日の幸せは、帰り道から家まで、ずっと私たちについてきてくれた秋の月だった。

今日のこころの花🌼

 今夜は少しだけ空を見上げてみましょう。いつもの月や星を、自分だけの物語にして楽しんでみてください。


#子育て
#秋の夜
#親子時間 

2026年10月1日木曜日

第62話 子育て 10月『秋のにおい』


 木曜日の朝、玄関を出て少し歩いたところで、子どもが突然立ち止まった。

「お母さん、なんかいいにおいする」

私も足を止めて、息を吸い込んでみる。

どこか甘くて、やさしい香り。

「あ、金木犀かな」

 辺りを見回すと、少し先の家の垣根に、小さな橙色の花が咲いていた。

「こんな小さいのに、すごいね」

子どもが鼻を近づけようとして、背伸びをする。

 昨日、九月の宝物を二人で数えたばかりだった。どんぐりや夕焼けのように、目で見つけるものばかりだと思っていたけれど、十月最初の宝物は、先に鼻が見つけてくれた。

「このにおい、持って帰れる?」

「難しいかな」

「じゃあ、いっぱい嗅いどこう」

二人で笑った。

 季節はカレンダーをめくったから変わるのではなく、風や光や香りの中から、少しずつ知らせに来るのかもしれない。

歩き出してもしばらく、甘い香りが後ろからついてきた。

 十月最初の日。

今日の幸せは、目には見えないのに確かにそこにあった、秋の香りだった。

今日のこころの花🌼

 今日は外に出たら、ゆっくり一度深呼吸。風や草花の香りから、今だけの季節を感じてみましょう。


#子育て
#金木犀
#季節を感じる 

2026年9月30日水曜日

第61話 子育て 9月の終わり『増えた宝物』


 水曜日の夜、カレンダーを見た子どもが言った。

「今日で九月、終わり?」

「そうだね。明日から十月」

「早かったねえ」

大人みたいな言い方がおかしくて、私は笑った。

 八月の終わりには、朝顔の種を小さな袋にしまった。九月には、どんぐりが四つ増えた。でも、この一か月で増えたものは、それだけではない。

長く伸びた二人の影。窓の外の虫の音楽会。温かい飲み物から上がった湯気。道端の黄色い花。そして昨日、一緒に眺めた金色の夕焼け。

「九月、何が一番楽しかった?」

そう聞くと、子どもは少し考えてから言った。

「いっぱいあって決められない」

「お母さんも」

二人で顔を見合わせて笑った。

 幸せは、一番を決めなくてもいいらしい。

大きな出来事がなくても、毎日の中で拾った小さなものが、気づけば心をいっぱいにしてくれる。

窓の外から、秋の虫の声が聞こえた。

 明日から十月。まだ知らない毎日が始まる。

今日の幸せは、九月を振り返ったとき、「楽しかった」が一つに決められないほどあったことだった。

今日のこころの花🌼

 今月の嬉しかったことを三つ思い出してみましょう。小さな幸せを数えて、明日の自分へ渡してあげましょう。


#子育て
#9月の振り返り
#小さな幸せ 

2026年9月29日火曜日

第60話  子育て 秋の夕方『金色の帰り道』


 火曜日の夕方、子どもと家へ向かって歩いていると、急にあたりが金色に染まった。

「お母さん、見て!」

西に傾いた太陽が、家の窓も電柱も道端の草も、みんな同じ色に照らしている。

 子どもは昨日、空っぽだったポケットに手を入れた。

「今日も何も入ってない」

「何か拾いたかった?」

「ううん。これ、入らないから」

そう言って、金色の空を指さした。

思わず笑ってしまった。

 確かに、どんなに大きなポケットでも夕焼けは入らない。

でも、持ち帰れないからこそ、今ここでちゃんと見ておきたくなるものがある。

二人で立ち止まり、しばらく空を眺めた。

 やがて太陽が家並みの向こうへ隠れると、金色だった道はいつもの色に戻っていった。

「なくなっちゃったね」

「でも、見たでしょう?」

「うん。お母さんも見たね」

同じ景色を誰かと見たこと。それなら、ポケットに入れなくても残っていく気がした。

 九月も、もうすぐ終わる。

今日の幸せは、持ち帰ることのできない夕焼けを、二人で心にしまえたことだった。

今日のこころの花🌼

きれいだと感じた景色に出会ったら、少し立ち止まって眺めましょう。心の中にも思い出は残せます。


#子育て
#秋の夕暮れ
#小さな幸せ

2026年9月28日月曜日

第59話 子育て 秋の朝『空っぽのポケット』


 月曜日の朝、玄関で靴を履いていた子どもが、ズボンのポケットを確かめた。

「あ、今日は何も入ってない」

 昨日までなら、そこにはどんぐりが入っていた。四号までそろった宝物は、今朝は机の上の「どんぐりのおうち」で留守番している。

「空っぽもいいんじゃない?」

私が言うと、子どもは不思議そうな顔をした。

「どうして?」

「今日見つけるものを入れられるから」

 家を出ると、風が少し冷たかった。歩道には黄色い葉が一枚、昨夜の雨粒を乗せて光っている。

子どもはしゃがんで眺めたけれど、拾わなかった。

「これは、ここに置いとく」

そして立ち上がると、空っぽのポケットをぽんぽんと叩いた。

「まだ入るよ」

その言葉に、私は笑った。

 心も同じなのかもしれない。思い出を大切にすることと、新しいものが入る余白を残しておくこと。その両方があっていい。

 月曜日は、一週間の始まり。

まだ何が起こるかわからない空白が、今日は少し楽しみに思えた。

今日の幸せは、何も入っていないからこそ広がっていた、ポケットいっぱいの余白だった。

今日のこころの花🌼

 予定を詰め込まず、今日は少しだけ余白を残してみましょう。そこに新しい幸せが入ってくるかもしれません。


#子育て
#心の余白
#小さな幸せ 

2026年9月27日日曜日

第58話 子育て 秋の休日『四つの宝物』


 日曜日の朝、子どもは昨日見つけたどんぐり四号を、机の上の「どんぐりのおうち」へ連れていった。

「これで四つ!」

一号、二号、三号、そして少し遅れて仲間入りした四号。きれいに並べると、子どもは満足そうに眺めている。

 「どれが一番好き?」

何気なく聞くと、しばらく考えてから答えた。

「みんな」

「四号じゃないの?」

「だって、一号がいなかったら二号も探してないもん」

その言葉に、私は少し驚いた。

 最初の一つがあったから、次を探したくなった。見つからない日があったから、見つけた昨日が嬉しかった。

四つのどんぐりには、それぞれ違う日の思い出が入っている。

 宝物は、きれいだから宝物になるのではないのかもしれない。

出会ったときの景色や、一緒にいた人や、そのときの気持ちまで重なって、大切なものになっていく。

「お母さんも、みんな好き」

そう言うと、子どもは嬉しそうに四つをもう一度並べ直した。

今日の幸せは、四つの小さなどんぐりの中に、親子で過ごした秋の日々を見つけたことだった。

今日のこころの花🌼

 身近な大切なものを一つ手に取り、その向こうにある人や時間、思い出までゆっくり振り返ってみましょう。


#子育て
#秋の思い出
#親子時間 

第77話 子育て 金曜日『二人分のありがとう』

 金曜日の夜。夕食の片づけをしていると、子どもが小さな布巾を持ってやってきた。 「お母さん、ぼくもやる!」 昨日、買い物袋を半分こしたことが、まだ嬉しいらしい。 「じゃあ、テーブルをお願いしようかな」 子どもは張り切って拭き始めた。右へ左へ、何度も布巾を動かす。 「できた!」 見...