2026年9月29日火曜日

第60話  子育て 秋の夕方『金色の帰り道』


 火曜日の夕方、子どもと家へ向かって歩いていると、急にあたりが金色に染まった。

「お母さん、見て!」

西に傾いた太陽が、家の窓も電柱も道端の草も、みんな同じ色に照らしている。

 子どもは昨日、空っぽだったポケットに手を入れた。

「今日も何も入ってない」

「何か拾いたかった?」

「ううん。これ、入らないから」

そう言って、金色の空を指さした。

思わず笑ってしまった。

 確かに、どんなに大きなポケットでも夕焼けは入らない。

でも、持ち帰れないからこそ、今ここでちゃんと見ておきたくなるものがある。

二人で立ち止まり、しばらく空を眺めた。

 やがて太陽が家並みの向こうへ隠れると、金色だった道はいつもの色に戻っていった。

「なくなっちゃったね」

「でも、見たでしょう?」

「うん。お母さんも見たね」

同じ景色を誰かと見たこと。それなら、ポケットに入れなくても残っていく気がした。

 九月も、もうすぐ終わる。

今日の幸せは、持ち帰ることのできない夕焼けを、二人で心にしまえたことだった。

今日のこころの花🌼

きれいだと感じた景色に出会ったら、少し立ち止まって眺めましょう。心の中にも思い出は残せます。


#子育て
#秋の夕暮れ
#小さな幸せ

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第68話 子育て 秋の夕方『手のひらの風』

 水曜日の帰り道。昨日より少し冷たい風が吹いて、子どもが両手を広げた。 「お母さん、風つかまえる!」 走り出すのかと思ったら、その場でじっとしている。 「つかまった?」 「うーん……逃げちゃう」  私も真似をして手のひらを広げた。風は指の間をすり抜け、髪を揺らして通り過ぎていく。...