2026年10月3日土曜日

第64話 子育て 秋の休日『月の忘れもの』


 土曜日の朝。カーテンを開けた子どもが、窓の外を見て声を上げた。

「お母さん、月がまだいる!」

 昨夜、帰り道からついてきた月が、薄い青空に白く浮かんでいた。

「帰るの忘れちゃったのかな」

そう言うと、子どもは少し考えて、

「きっと忘れものしたんだよ」

と笑った。

「何を?」

「夜!」

思わず二人で笑ってしまった。

 昨日まで夜のものだと思っていた月が、朝の空にもいる。知っていたはずなのに、こうして眺めると少し不思議だった。

 朝食を終えて外へ出ると、月はさっきより淡くなっていた。金木犀の香りが風に混じり、道には黄色い葉が落ちている。

「もう帰っちゃうね」

子どもが空を見上げる。

「また夜になったら会えるよ」

見えなくなることは、なくなることとは違う。

朝顔の種も、どんぐりの思い出も、昨日の月も。目の前にない時間にも、ちゃんとどこかで続いている。

 十月最初の土曜日。

今日の幸せは、朝の空に残っていた、月のかわいい忘れものだった。

今日のこころの花🌼

 いつも知っているものを、少し違う時間や角度から眺めてみましょう。新しい発見が待っているかもしれません。


#子育て
#秋の空
#小さな発見 

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