2026年9月14日月曜日

第45話 子育て 月曜日『ポケットの秋』


 月曜日の朝。玄関で靴を履こうとした子どもが、昨日のズボンのポケットに手を入れた。

「あった!」

出てきたのは、昨日の遠回りで拾った二つのどんぐり。

「忘れてたの?」

「忘れてないよ。入れてたの」

その言い方がおかしくて、二人で笑った。

 週の始まりは慌ただしい。水筒を確認して、忘れ物はないか確かめて、時計を見ながら家を出る。

歩き始めてしばらくすると、子どもがポケットをぽんぽんと叩いた。

「どんぐりも一緒に行ってる」

昨日は公園で見つけた秋が、今日はポケットの中にいるらしい。

「重くない?」

「ぜんぜん。宝物だから」

 その言葉を聞いて、ふと思った。

楽しかった時間は、その場所に置いてくるものではないのかもしれない。

目には見えなくても、嬉しかったことや笑ったことを、私たちは心のポケットに入れて次の日へ持っていける。

昨日の遠回りも、今朝の笑い声も、きっとそう。

 角を曲がると、少し涼しい風が吹いた。

忙しい月曜日にも、昨日の幸せはちゃんとついてきてくれる。

今日の幸せは、歩くたび小さく鳴る、ポケットの中の秋だった。

今日のこころの花🌼

昨日の嬉しかったことを一つ思い出してみましょう。心のポケットに入れて、今日へ連れていきましょう。


#子育て
#秋の暮らし
#小さな幸せ 

2026年9月13日日曜日

第44話 子育て 秋散歩『遠回りの日曜日』


 日曜日の夕方、買い物を終えて家へ向かっていると、子どもがいつもの角で立ち止まった。

「今日は、こっちから帰ろうよ」

指さしたのは、公園をぐるりと回る遠回りの道。

少し迷った。買ったものは重いし、帰れば夕食の支度もある。

 でも昨日、何もしない朝を過ごしてみて、急がない時間も悪くないと知ったばかりだ。

「じゃあ、今日はこっち」

子どもの後をついて歩いた。

 公園では、夏には青々としていた木の葉が、ほんの少し黄色くなっている。

「あ、秋が増えてる」

子どもが嬉しそうに指さした。

その先には、風に揺れるすすき。足元には小さなどんぐりが二つ。

「どんぐり二号と三号!」

拾い上げた子どもが笑う。

 九月最初の土曜日に見つけた一号には、もう仲間ができた。

遠回りしたぶん、夕食は少し遅くなる。

でも、そのぶん私たちは、黄色い葉とすすきと二つのどんぐりに出会えた。

 近道は早く着く。

けれど遠回りでしか見つからないものもある。

今日の幸せは、急がなかったから出会えた、小さな秋の続きだった。

今日のこころの花🌼

今日は少しだけ、いつもと違う道を選んでみましょう。遠回りの中に、新しい景色が待っているかもしれません。


#子育て
#秋の散歩
#小さな幸せ 

2026年9月12日土曜日

第43話 子育て 秋の休日『何もしない朝』


 土曜日の朝、目を覚ますと、カーテンの隙間からやわらかな光が差し込んでいた。

 昨日は「できない日もある」と子どもに教えてもらったばかり。

今日は急いで起きなくてもいい。そう思ったのに、頭の中には洗濯、掃除、買い物と、やることが次々浮かんでくる。

布団を出ようとしたとき、隣から小さな声がした。

「もうちょっと、ごろごろしようよ」

見ると、子どもが枕を抱えて笑っている。

「でも、洗濯が……」

言いかけて、やめた。

「じゃあ、五分だけね」

二人で並んで天井を眺める。

 窓の外では鳥が鳴き、風に揺れたカーテンがふわりと膨らんだ。

「気持ちいいね」

子どもが言う。

本当だ。

何もしていないのに、なんだか満たされている。

 いつから私は、休むことにも理由が必要だと思うようになったのだろう。

五分のつもりが、少し長くなった。

それでも洗濯物は逃げないし、朝ごはんが少し遅くても困らない。

 忙しい毎日には、何かをする時間だけでなく、何もしない時間もあっていい。

今日の幸せは、予定表には書かれていない、親子でごろごろした朝だった。

今日のこころの花🌼

今日は五分だけ、何もしない時間をつくってみましょう。休むことも、自分を整える大切な時間です。


#子育て
#頑張りすぎない
#心を休める 

2026年9月11日金曜日

第42話 子育て 金曜日『できない日もある』


 金曜日の朝から、なんとなく調子が出なかった。

洗濯物を干すのが遅れ、出かける直前に探し物。帰宅すれば、買うはずだった牛乳を忘れていることに気づいた。

「今日、だめだなあ」

夕食の支度をしながら、思わずつぶやいた。

 すると、そばにいた子どもが言った。

「お母さんも、できない日あるの?」

一瞬、答えに迷ってから笑った。

「あるよ。いっぱいある」

「ぼくと一緒だね」

その言葉に、肩の力が抜けた。

 先週、みんなの前で間違えたことを恥ずかしそうに話してくれた子ども。そのとき私は、「またやってみたらいい」と伝えた。

なのに、自分には「ちゃんとしなきゃ」と言い続けていたらしい。

 冷蔵庫にあるもので簡単な夕食を作り、二人で食卓につく。

「これ、おいしいよ」

「ほんと?」

「うん。だから今日は、だめじゃないよ」

 窓の外から秋の虫の声が聞こえた。

できなかったことがいくつあっても、それだけで一日全部が失敗になるわけではない。

今日の幸せは、子どもの言葉に教えてもらったこと。

できない日がある私も、ちゃんと私なのだ。

今日のこころの花🌼

できなかったことではなく、今日できたことを一つ思い出して、自分にも「よくやった」と声をかけましょう。


#子育て
#頑張りすぎない
#自分を大切に 

2026年9月10日木曜日

第41話 子育て 秋の夜『聞こえたありがとう』


 木曜日の夜。夕食を終えるころには、窓の外はもう暗くなっていた。

「暗くなるの、早くなったね」

子どもが窓を見ながら言う。

 昨日、二人で見た青と橙色の空を思い出した。少し前まで、この時間はまだ明るかったのに、季節はちゃんと進んでいる。

 食器を片づけようとすると、子どもが自分の皿とコップを持ってきた。

「ここでいい?」

「うん、ありがとう」

何気なく答えると、子どもが振り返った。

「お母さん、今日いっぱいありがとうって言ったね」

「そう?」

朝、水筒を渡してくれたとき。落とした洗濯ばさみを拾ってくれたとき。そして今。

 数えていたわけではない。でも、言われてみると、小さな「ありがとう」が一日のあちこちにあった。

「じゃあ、ぼくも。ごはん作ってくれてありがとう」

思いがけない一言に、私は笑ってしまった。

「どういたしまして」

 窓の向こうでは、秋の虫が静かに鳴いている。

特別なことは何もなかった木曜日。

でも「ありがとう」を探してみれば、今日も誰かに助けられ、誰かを支えていた。

 幸せは、もらうものだけではなく、言葉にしたときにも少し大きくなるらしい。

今日最後の「ありがとう」は、子どもと笑い合えた、この夜に。

今日のこころの花

今日してもらった小さなことを一つ思い出して、「ありがとう」を言葉にして届けてみましょう。


#子育て
#ありがとう
#親子時間 

2026年9月9日水曜日

第40話 子育て 帰り道『半分こした空』


 水曜日の帰り道。昼間の暑さがまだ残っていて、子どもも私も少し疲れていた。

「今日、長かったなあ」

思わず口にすると、隣から「ぼくも」と返ってきた。

いつもなら「もう少しだから頑張ろう」と言うところだけれど、今日は二人で「疲れたね」と笑った。

 そのとき、子どもが空を指さした。

「お母さん、半分ずつだよ」

見上げると、西の空は夕焼けの橙色。反対側には、まだ淡い青が残っていた。

「ほんとだ。昼と夜で半分こしてるみたい」

二人で立ち止まって眺める。

 昨日は朝露の蜘蛛の巣。今日は二色の空。

同じ道を歩いているのに、毎日違うものが待っている。

「お母さん、どっちが好き?」

「うーん、両方かな」

「ずるい」

子どもが笑った。

 疲れた一日は、なかったことにはできない。でも、その中にきれいなものが一つあれば、「疲れただけの日」ではなくなるのかもしれない。

家に着くころ、空の青はすっかり薄くなっていた。

今日の幸せは、子どもと半分こして眺めた、夕暮れの空だった。

今日のこころの花🌼

疲れた日は、きれいだと思えるものを一つ探してみましょう。それだけで今日の景色が少し変わります。


#子育て
#親子の帰り道
#小さな幸せ 

2026年9月8日火曜日

第39話 子育て 朝時間『急がない一分』


 火曜日の朝は、いつもより少し遅れていた。

「早く靴履いて」「水筒持った?」

言葉まで走り出しそうになる。

 玄関を出て数分歩いたところで、子どもが突然立ち止まった。

「お母さん、見て」

道の端に、朝露をまとった小さな蜘蛛の巣があった。細い糸に光が当たり、きらきらと揺れている。

「きれいだね」

そう言いながら時計を見る。やっぱり時間はぎりぎりだ。

「行こう」と言いかけたとき、昨日、画用紙に描かれた「お母さんの場所」を思い出した。

 私はしゃがんで、子どもと同じ高さから蜘蛛の巣を見た。

「宝石みたい」

「ほんとだね」

ほんの一分だった。

再び歩き始めると、子どもは満足そうに私の手を握った。

 急ぐ朝がなくなるわけではない。毎回立ち止まれるわけでもない。

それでも、立ち止まれる一分があることを、私は前より知っている。

時間に追われていると、一分は惜しく感じる。

でも、その一分で見つけられるものもある。

今日の幸せは、予定表にはなかった、朝露の小さな宝石だった。

今日のこころの花🌼

忙しいときこそ一分だけ周りを見てみましょう。予定になかった小さな幸せが見つかるかもしれません。


#子育て
#忙しい朝
#小さな幸せ 

第51話 子育て 秋散歩『拾わない宝物』

 日曜日の午後、子どもといつもの公園へ出かけた。 「今日は、どんぐり四号を探す!」 張り切って歩き始めたけれど、なかなか見つからない。 その代わり、道の端に赤く色づき始めた葉を見つけた。 「これ、持って帰ろうかな」 子どもが手を伸ばしかけて、ふと止まった。  葉の上に、小さなてん...