2026年10月9日金曜日

第70話 子育て 金曜日『今週の花まる』


 金曜日の夜。夕食を終えると、私は思わず「今週も疲れたなあ」とつぶやいた。

子どもがこちらを見て言う。

「でも、明日はお休みだよ」

「そうだね。なんとか一週間終わったね」

すると子どもは、少し不満そうな顔をした。

「なんとか、じゃないよ」

「え?」

「ちゃんと終わったんだよ」

思わず笑ってしまった。

 今週を振り返れば、朝は急いだし、忘れ物もした。夕食が簡単な日もあったし、もっと優しく言えばよかったと思うこともある。

それでも、毎朝「いってらっしゃい」と送り出し、夜には「おかえり」と迎えた。落ち葉の音を聞き、秋の風を感じ、湯気の向こうで一緒に笑った。

完璧ではなかった。でも、ちゃんと暮らした一週間だった。

 「じゃあ、今週は花まる?」

そう聞くと、子どもは両手で大きな丸をつくった。

「でっかい花まる!」

 金曜日くらい、自分のできなかったことを数えるのはやめよう。

今日の幸せは、一週間を頑張った自分にもらった、大きな花まるだった。

今日のこころの花🌼

 今週できたことを一つ思い出して、自分に花まるを。頑張った一週間をやさしく終えましょう。


#子育て
#自分を褒める
#小さな幸せ 

2026年10月8日木曜日

第69話 子育て 秋の夜『湯気の向こう』


 木曜日の夜。夕食を終えたあと、子どもが窓を少し開けた。

「今日は風、冷たいね」

昨日は帰り道で、その風をつかまえようと両手を広げたのに、夜になるとずいぶん冷たく感じる。

「温かいもの、飲もうか」

 私は二つのカップを用意した。子どもには温めた牛乳、私はほうじ茶。

テーブルに並べると、白い湯気がゆらゆらと上がった。

 子どもが向こう側から私を見る。

「お母さんの顔、雲の中にいるみたい」

「そっちもだよ」

二人でカップに息を吹きかけると、湯気が揺れて、顔が見えたり隠れたりする。

 何を話すでもなく、しばらく温かいカップを両手で包んでいた。

一日の終わりには、反省することがいくつも浮かんでくる。でも、今日できなかったことは、明日に置いておけばいい。

 今はただ、ここにある温かさを感じよう。

冷たい風が吹くからこそ、わかるぬくもりもある。

今日の幸せは、湯気の向こうで笑っていた、いつもの顔だった。

今日のこころの花🌼

 一日の終わりに温かい飲み物を一杯。できなかったことより、今あるぬくもりを感じてみましょう。


#子育て
#秋の夜
#心を休める 

2026年10月7日水曜日

第68話 子育て 秋の夕方『手のひらの風』


 水曜日の帰り道。昨日より少し冷たい風が吹いて、子どもが両手を広げた。

「お母さん、風つかまえる!」

走り出すのかと思ったら、その場でじっとしている。

「つかまった?」

「うーん……逃げちゃう」

 私も真似をして手のひらを広げた。風は指の間をすり抜け、髪を揺らして通り過ぎていく。

「ほんとだ。つかまらないね」

「でも、いるのはわかるよ」

その言葉に、私は少し驚いた。

 昨日は落ち葉の音を聞いた。今日は、見えない風を感じている。

目に見えなくても、手に残らなくても、確かにそこにあるものはたくさんある。誰かの優しさや、一緒に過ごした時間も、きっと同じなのかもしれない。

「お母さん、もう一回来た!」

子どもが笑う。

 今度は私も両手をいっぱいに広げた。

十月の風が、二人の間を駆け抜けていった。

 何も持っていない手のひらなのに、なぜか少し満たされている。

今日の幸せは、つかまえることはできなくても、二人で確かに感じた秋の風だった。

今日のこころの花🌼

 外に出たら一度手を広げ、風を感じてみましょう。見えない心地よさにも気づく時間を。


#子育て
#秋の風
#小さな幸せ 

2026年10月6日火曜日

第67話 子育て 秋の朝『急がない歩幅』


 火曜日の朝。家を出る時間が、いつもより少し遅くなった。

「急ごう」

そう言って歩き出したのに、子どもの足取りが妙にゆっくりしている。

「どうしたの?」

「葉っぱ、踏んでるの」

 見ると、道の端に乾いた落ち葉が何枚か落ちていた。子どもは一枚ずつ狙って、ぱりっ、かさっ、と音を鳴らしている。

時 計が気になった。でも昨日、冷蔵庫の横に貼った絵と、「お母さんといたよ」という言葉を思い出した。

私は歩幅を少し小さくした。

ぱりっ。

今度は私の靴の下で音がした。

「あ、お母さんもやった!」

 二人で次の落ち葉を探しながら歩く。ほんの数十秒の寄り道だった。

「秋って音もするんだね」

子どもの言葉に、私はうなずいた。

 季節は見るもの、香るものだけではなかったらしい。

忙しい朝だからこそ、少しだけ歩幅を合わせる。それだけで、いつもの道に知らなかった楽しさが見つかる。

今日の幸せは、急ぐ足を少しゆるめたから聞こえた、秋の小さな音だった。

今日のこころの花🌼

 今日は少しだけ歩く速さをゆるめて、足元の音や風の音に耳を澄ませてみましょう。


#子育て
#秋の朝
#季節を感じる 

2026年10月5日月曜日

第66話 子育て 月曜日『昨日の絵』


 月曜日の朝。慌ただしく朝食を片づけていると、昨日、子どもが描いた絵が目に入った。

家と大きな空。その下に並んだ、私と子ども。

「これ、飾っていい?」

そう聞くと、子どもは少し照れながらうなずいた。

 冷蔵庫の横にそっと貼る。たったそれだけなのに、いつもの台所が少し明るくなった気がした。

「昨日、何もしなかったのにね」

私が笑うと、子どもは首をかしげた。

「何もしなくないよ。お母さんといたよ」

手が止まった。

 私はつい、出かけた、作った、片づけた――そんな目に見えることを「したこと」と数えてしまう。

でも、一緒にいることも、笑うことも、のんびりすることも、ちゃんと一日の中に残っていく。

 家を出る前、もう一度その絵を見た。

昨日の何もしない午後が、今日は小さな応援になっている。

「行ってきます」

 忙しい月曜日は変わらない。それでも、心は少しだけ軽かった。

今日の幸せは、昨日のゆっくりした時間が、月曜日までついてきてくれたことだった。

今日のこころの花🌼

 昨日の小さな幸せを一つ思い出してみましょう。その余韻を、今日を歩く力に変えてみてください。


#子育て
#月曜日
#小さな幸せ 

2026年10月4日日曜日

第65話 子育て 秋の休日『何もしない午後』


 日曜日の午後。「どこか行く?」と聞くと、子どもは少し考えてから首を振った。

「今日は、おうちがいい」

せっかくの休日なのに、と一瞬思った。買い物、公園、季節のイベント。休みの日くらい何かしてあげたいという気持ちが、いつものように顔を出す。

けれど、今日は何も決めないことにした。

 私は温かいお茶をいれ、子どもは床に寝転んで絵を描き始めた。窓を少し開けると、金木犀の甘い香りと涼しい風が入ってくる。

時計の音。紙をこする鉛筆の音。ときどき聞こえる鳥の声。

「お母さん」

「なあに?」

「今日、静かでいいね」

その一言に、肩の力が抜けた。

 何かをした日だけが、いい休日なのではない。どこにも行かなくても、特別なことをしなくても、一緒に穏やかに過ごした時間はちゃんと残る。

 夕方、子どもが描いた絵を見せてくれた。そこには家と、大きな空と、二人並んだ私たちがいた。

今日の幸せは、予定のない午後に流れていた、何もしなくていい時間だった。

今日のこころの花🌼

 今日は予定をひとつ減らして、何もしない時間をつくってみましょう。心の余白も大切な休日です。


#子育て
#何もしない休日
#心の余白 

2026年10月3日土曜日

第64話 子育て 秋の休日『月の忘れもの』


 土曜日の朝。カーテンを開けた子どもが、窓の外を見て声を上げた。

「お母さん、月がまだいる!」

 昨夜、帰り道からついてきた月が、薄い青空に白く浮かんでいた。

「帰るの忘れちゃったのかな」

そう言うと、子どもは少し考えて、

「きっと忘れものしたんだよ」

と笑った。

「何を?」

「夜!」

思わず二人で笑ってしまった。

 昨日まで夜のものだと思っていた月が、朝の空にもいる。知っていたはずなのに、こうして眺めると少し不思議だった。

 朝食を終えて外へ出ると、月はさっきより淡くなっていた。金木犀の香りが風に混じり、道には黄色い葉が落ちている。

「もう帰っちゃうね」

子どもが空を見上げる。

「また夜になったら会えるよ」

見えなくなることは、なくなることとは違う。

朝顔の種も、どんぐりの思い出も、昨日の月も。目の前にない時間にも、ちゃんとどこかで続いている。

 十月最初の土曜日。

今日の幸せは、朝の空に残っていた、月のかわいい忘れものだった。

今日のこころの花🌼

 いつも知っているものを、少し違う時間や角度から眺めてみましょう。新しい発見が待っているかもしれません。


#子育て
#秋の空
#小さな発見 

第77話 子育て 金曜日『二人分のありがとう』

 金曜日の夜。夕食の片づけをしていると、子どもが小さな布巾を持ってやってきた。 「お母さん、ぼくもやる!」 昨日、買い物袋を半分こしたことが、まだ嬉しいらしい。 「じゃあ、テーブルをお願いしようかな」 子どもは張り切って拭き始めた。右へ左へ、何度も布巾を動かす。 「できた!」 見...