2025年6月14日土曜日

きれいになったくつと涙


 朝、靴を履かせようとしたら、「じぶんでやるの!」と息子がむきになる。

でも時間がないわたしは、「もう!いいからママがやる!」とつい手を出してしまった。

 玄関に広がる、沈黙。

急いでるのはこっちなのに、なぜか泣きたいのはわたしだった。

 夜、靴をしまおうとしたら、小さな手でそっと拭かれた形跡があった。

きれいになったつもりの、まだ汚れたままの靴。

 「がんばったんだね」って、胸がつんとした。

わたしも、明日は少しだけ待ってみよう。

2025年6月13日金曜日

最後はだっこでおしまい


 今日も何回「早くしなさい!」って言ったんだろう。

おもちゃ片づけない、靴履かない、ごはんも時間がかかる。

わたしばっかり怒ってる。

 夜、絵本を読んでも息子はもじもじ。

「ねえ、だっこして?」って言われて、ちょっとだけ戸惑った。

さっき怒ったばかりなのに、まだ甘えてくれるの?

ぎゅっと抱きしめたら、「ママ、やさしいにおい」って声がふにゃっと聞こえた。

 こんな日でも、最後はだっこでおしまい。

それだけで、なんとかやっていける気がした。

2025年6月12日木曜日

洗濯物と私のリセットボタン


 朝からなんだかうまくいかず、息子のぐずぐずにわたしも限界。

「もう、ママだって疲れるんだよ!」って叫んでしまった。

沈黙の中、洗濯機の終了音だけが響いた。

 ベランダで洗濯物を干しながら、空を見上げる。

ふうっと深呼吸していたら、後ろから「ママ、これ」と、息子が靴下を持ってきた。

その顔が、少し不安そうで、でも近づいてきたことが嬉しくて、「ありがとう」と笑ってみた。

 洗濯物と一緒に、気持ちも干して。

わたしの今日のリセットは、ここからだった。

2025年6月11日水曜日

ひとくちのごめんね「ごめんねのかわりにプリン」


 お昼ごはん中、「こぼさないでって言ったでしょ!」

つい声が大きくなって、息子はしゅんとする。

ああまたやっちゃった…と思いながら、気まずい空気のまま、お皿を片づける。

 ふたり分のプリンを冷蔵庫から出して、スプーンで小さくすくって、息子の前へ。

「ごはんのあとはこれだね」と言ったら、彼の顔がふわっとほころんだ。

 ごめんねって、言えなかったけど、たったひとくちの甘さが、わたしたちの間の空気を、すこしやわらかくした。

2025年6月10日火曜日

スリッパの音で気づいたこと「ペタペタ音と、小さな努力」


 朝からバタバタで、着替えもごはんも「早くして!」の連発。

息子は何も言わず、黙ってついてくる。

ただ、ぺたぺたとスリッパの音だけが、わたしのあとを追ってくる。

 ふと振り返ったら、小さな手に靴下とスプーン。

怒られないように、先回りしようとしてた。

その姿に、胸がきゅっとなった。

 わたし、怒ってばかりだったね。

手をつなごう、と言ったら、ちょっとだけ照れたように、でも嬉しそうに笑った。

 子どもはちゃんと見てる。

だからわたしも、ちゃんと見ていたい。

2025年6月9日月曜日

眠るわが子に、そっとごめんね


今日はもう、なんど「早くして!」って言っただろう。

そのたびに息子の顔がしょんぼりしていったのを、どこかで気づいてたのに止まれなかった。

 夜、眠る顔をのぞきこんで、こっそりつぶやく。

「さっきはごめんね。ほんとは、いっぱい抱きしめたかったんだよ」

返事はもちろんないけれど、小さな寝息が、わたしを少し救ってくれた。

 完璧なママにはなれないけれど、やさしくなりたいって思ってる。

それだけは、ちゃんと伝わってほしい。

2025年6月8日日曜日

冷たい麦茶と、わたし「怒っても、人間だもん」


 おもちゃを投げた息子に、「もう知らない!」と怒鳴ってしまった。

5秒後には、自己嫌悪でいっぱい。

さっきまで一緒に笑ってたのに、どうしてこんなに不器用なんだろう。

 台所に逃げて、冷たい麦茶をコップに注ぐ。

ひと口飲むと、のどをすっと通って、少しだけ気持ちがゆるんだ。

大きく息を吐きながら、心の中でつぶやく。

「怒っちゃった。でも、わたしも人間だもん」

 その言葉に、涙がじんわりにじんで、それと一緒に、少しだけやさしさも戻ってきた気がした。

第32話 子育て 秋の気配『新しい朝』

 九月最初の朝。 昨日までと同じ時間に起き、同じように朝食を作り、水筒を用意する。カレンダーを一枚めくったところで、子どもが言った。 「今日から九月だね」 「そうだね」 たったそれだけなのに、新しい月が始まったことが少し嬉しかった。  玄関を出ると、日差しにはまだ夏の強さが残って...